公開日: 2019/01/06
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エコを意識し、自然な生産方法で農作物を生産したい -武蔵野市八幡町の田中茂さん


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武蔵野市八幡町の野菜農家 田中茂さん

武蔵野市八幡町で農業を営まれている田中茂さん。
野菜農家としてのこだわり、地域や都市農業の未来への思いを伺いました。

 

田中茂(たなか しげる)さん
年齢 45歳
結婚して4年。4歳の男の子と私の父親と4人家族。
趣味は子供ですかね。朝昼晩(幼稚園に行っているときは無理ですけど)ほぼ毎日子供と戯れるのが日課。

 

– 家業を継いだ「きっかけ」と「その経緯」を教えてください。

兄の結婚を機に、突然後継者に

田中茂さん(以下田中さん) 長男である兄長男がいたこともあり、家族も私自身も、私が後を継ぐということは考えていませんでした。ですので、20代の頃は農業を手伝うこともなく、普通にサラリーマンとして生活をしていました。しかし、兄が結婚するにあたり、同じく農業をしていた奥さんの実家の後継者になることとなりました、。そこで急遽、私が実家を継ぐことになったのです。29歳のときです。

 

子どもの頃から仕事は手伝っていましたし、父もいましたので、家を継ぐことに抵抗はありませんでした。農業に関する知識は、JAが開催する新規就農者向けの研修に2年ほど通ったほか、親やJAの横のつながりから教わってきました。現在では農業歴は16年になります。

 

– 農作物を生産する上で具体的に力を入れている(もしくは入れていく)ものを詳しく教えてください。

旬な時期に旬な野菜を地元の皆さんに提供したい

田中さん 年間を通して30~40品目栽培しています。ハウス栽培の方が管理は楽なのですが、やはり旬の野菜を作りたいという思いがありますので、露地栽培をメインにしていますね。

 

田中茂さんの畑

 

雑草を生やさずエコを意識し、景観にも配慮

田中茂さん(以下田中さん) 畑に雑草を生やさないよう、日々気をつけるようにしています。特に実のついた雑草は、放置すると種を落としてしまい、何年も生え続けてしまうので、手で確実にむしり取っています。
雑草が増えてしまうと、農作物の生育に影響が出たり、せっかくの肥料が雑草に取られてしまったりといった影響があります。こういった栽培上の問題もそうですが、地域で暮らす方たちにとっても、雑草が生えている畑は見ていて気分がいいものではないと思います。農作物はもちろんですが、畑が地域の景観の一部であることも意識して農作業をしています。

 

また、農薬の使用もなるべく控えるようにしています。病気を予防するために使うこともあるので、全く使用しないということはありませんが、防虫ネットなどの資材を駆使して、なるべく使わずに済むように工夫しています。もちろん、その分労力はかかります。が、けれども、野菜を購入してくださるみなさんにとって良いものを提供したいと思っていますので。

 

自然な生産方法にこだわり農作物を生産

田中茂さん(以下田中さん) 生産方法でいうと、苗を買って生産するのではなく、種屋さんから買った種からちゃんと作るようにしています。温度管理が大変なんですけどね。

 

苗床も、電熱線をひいて温めるのではなく、昔ながらの落ち葉、わら、ぬかを敷いて踏み込み、温床を作っています。畑にハウスが1つだけありますが、これは苗づくりのためのものです。
また、病気になりにくくなるような接木処理はまったくやらず、自根にこだわって生産しているのもこだわりですかね。栄養を吸いすぎて皮が硬くなる場合もあり、自根で作るようにしているんです。

 

– 一般的な1日の流れを教えてください。

田中さん このような形で1日が過ぎていきます。
◆夏場(5月中旬から7月)

 

◆冬場(12月から3月中旬)

 

畑について説明する田中さん

 

武蔵野市の農業の特徴を教えてください

田中さん 武蔵野市は、学校給食で8割の小学校がセンター方式(センターで給食を作り、各学校に運搬する仕組み)を取り入れていまして、野菜の納品がほぼ一箇所にまとまるようになっています。2009(平成21)年に、JAで学校給食部会を立ち上げ、市や栄養士、JA、農家が一体となって食育、地産地消に取り組んできました。

 

部会の立ち上げ前は、それぞれの農家ごとに学校給食への納品を行っていたのですが、JAで取りまとめて納品ができるようになったことによって、現在では地場産野菜の供給率は20%台に達しています。とうもろこしだけに絞ると100%地場産のものになっています。
当面の目標は全体で30%。目標達成のため、栄養士との意見交換会を年2回実施して、給食の献立と農家作付け計画を調整したりしています。
また、センター方式の学校だけでなく、自校方式の学校向けにも、JA経由で学校にも納品させていただいてます。

 

農家さんとしての課題についてお聞きします

 

農家さんとしての「課題」と「対策」を教えてください

田中さん 私が今感じている課題は、主に2つあります。

 

1つ目は「出荷に伴う時間と人手」

田中さん 現在、我が家では、私と父と二人で農作業を行っています。しかし、父も78歳になり、昔に比べれば衰えも見え始めています。父には荷造り、袋詰め、草取りなどを担当してもらっていますが、今後、自分一人で農業を続けると考えると、今までと同じようには時間を使うことができないと思います。その対策としては、小売りを減らして効率の良い学校給食への出荷を増やしていくことを考えています。

 

また、まだ先にはなりますが、きちんとしたボランティア制度が整えば、受け入れもやっていきたいです。人手が確保された際は、農地に庭先ではないちゃんとした直売所を設け、自分の野菜を顔の見える関係で販売していきたいです。

 

2つ目は「相続にまつわる問題」

田中さん 都市農地は相続が起きると、どんどん減っていきます。地方であれば10ヘクタールほどの農地を所有している農家は珍しくありませんが、武蔵野市の農地は平均0.35ヘクタールほどです。

 

その対策としては、少ない農地で効率的に農業を続ける方法を追求したり、政治や行政に働きかけて相続税の軽減や営農を継続できる制度づくりに取り組んだり、色々とあるかと思います。

 

また、一農家としてできることとしては、畑を畑として維持し、次の世代にきちんと引き継いでいくことだと考えています。やはり私たちは農業が生業ですし、それをもって、地域のみなさんからのご理解をいただいているはずなのですから。

 

今、国の農業政策が、特に都市農業に対して、法律、施策の面で大きく方向転換し始めています。それに伴って、人々の農業、農地に対する考え方も変わってきています。だからこそ、農地を農地として活用し、そこで暮らす方々に農作物を届けていくことが、これからの農業を続けていくための第一歩なのではないでしょうか。

 

災害時の一時避難場所として畑を地域にオープンにされていました

 

田中茂さんの生産品リスト
<春野菜>

大根、カブ、小松菜、ホウレンソウ、スナックエンドウ、そら豆、リーフレタス、菜花、など。

<夏野菜>

トマト、トウモロコシ、枝豆、キュウリ、ナス、ピーマン、ジャガイモ、人参、ミニカボチャ、インゲン、モロヘイヤ、など。

<秋・冬野菜>

大根、カブ、小松菜、リーフレタス、ブロッコリー、キャベツ、長ネギ、人参、白菜、里芋、八つ頭、ヤーコン、など。

 

– 田中さん、ありがとうございました。

 

取材:小松由美 / 塩澤誠一郎/ 横堀陽子 / 田島達也 / 苔口昭一

文 :田島達也 (校正:米川充)

撮影:横堀陽子

 

田中茂さんの野菜を購入できる場所

JA東京むさし 武蔵野新鮮館
住所:東京都武蔵野市西久保1丁目18−10
営業時間:10:00~17:00(定休日なし)
※農作物のバーコードネームはお父様の「田中 邦雄」さん名義

 

サミット上連雀店
住所:東京都三鷹市上連雀7-32-26
営業時間:9:00~23:00
※農作物のバーコードネームは「田中 茂」さん名義

 

田中さんありがとうございました!

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