
「都市農業」と聞いて、住宅街の隅にある小さな畑をイメージする方は多いかもしれません。しかし実際には、全国で約10万の経営体が都市農業を営み、農産物販売額は1.33兆円に達しています(農林水産政策研究所、2024年)。
三鷹市・武蔵野市も、その最前線に位置する地域のひとつです。住宅地に囲まれながら、代々続く農家が野菜・果樹・花き・植木を育て、消費者と直接つながる農業を展開しています。
このページでは、都市農業の定義から、数字で見る現状、そしてあなたが関われる方法までを一気にお伝えします。
都市農業振興基本法(2015年制定)では、都市農業を「市街地及びその周辺の地域において行われる農業」と定義しています。具体的には、人口集中地区(DID)の内部や、その周辺500m圏内で営まれる農業を指します。
東京都・神奈川県・大阪府・愛知県といった大都市圏の中心地域では、農地全体に占める都市農業の割合が50%を超えています(農林水産政策研究所、2024年)。三鷹・武蔵野もその一角を担っています。
都市農業の位置づけは、2015年を境に大きく変わりました。それ以前は、市街化区域内の農地は「おおむね10年以内に宅地化を図るべき土地」とされていました。しかし都市農業振興基本法の制定により、都市の農地は「あるべきもの」として積極的に保全する方針へと転換されたのです。
この転換を支える制度が相次いで整備されました。
特定生産緑地制度(2018年)
生産緑地指定後30年の税制特例を、10年単位で繰り返し延長できる制度です。2022年に大量の農地放出が懸念されましたが、東京都内の対象農地の約94%が特定生産緑地に移行しました(国土交通省、2022年)。
都市農地の貸借の円滑化に関する法律(2018年)
それまで事実上不可能だった生産緑地の貸借を可能にした法律です。貸した場合でも相続税の納税猶予が継続される仕組みが整いました。
経営体数は減少していますが、農産物販売額は減っていません。一経営体あたりの生産性は、むしろ上がっているのです(農林水産政策研究所、農業センサス分析、2024年)。
東京都の農地面積の推移(2011〜2021年)
出典:農林水産省「耕地及び作付面積統計」
東京都の農地面積は令和3年時点で6,410ha。平成23年からの10年間で1,190ha(減少率15.6%)が失われています。
東京都の農業従事者数の推移(2000〜2020年)
出典:農林水産省「農業センサス」
総農家数も令和2年に9,567戸となり、調査開始以来初めて1万戸を割りました(農林業センサス)。
一方で、農業に関わる人の幅は広がっています。新規就農者は令和3年に67人(5年前の1.5倍)、農業体験農園は142か所(10年で2倍以上)、市民農園と合わせて572か所が都内で運営されています。
農林水産政策研究所の2024年分析では、人口密度が高い都市部ほど次の指標が上がることが示されています。
| 指標 | 全国平均 | 都市的地域 |
|---|---|---|
| 後継者確保率 | 28.9% | 30.5%(全地域で最高) |
| 直接販売実施率 | — | 人口密度1万人/km²以上では53.7% |
| 有機農業実施率 | — | 人口密度5,000人/km²以上で顕著に増加 |
全国・東京都の縮小傾向は、私たちまちなか農家プロジェクトが応援するエリアである三鷹市と武蔵野市でも同じように進んでいます。
三鷹市の農地面積は2000年(平成12年)の206haから2023年(令和5年)には140haへ、
20年あまりで約32%減少しました。武蔵野市でも2016年から2025年のわずか9年間で
30.95haから25.11haへ、約19%減っています。
三鷹市の農地面積の推移(2000〜2023年)
出典:三鷹市「三鷹市農業振興計画2027」(令和7年3月)
武蔵野市の農地面積の推移(2016〜2025年)
出典:武蔵野市「令和7年度版 武蔵野市の農業」
都市農業振興基本法第3条は、都市農業の多様な機能を明文化しています。
消費地に隣接しているため、収穫したその日に消費者へ届けることができます。東京都民への意識調査では「東京農業に期待すること」の第1位が「新鮮であること」(51.6%)、第2位が「安全・安心であること」(42.7%)でした(令和2年都政モニターアンケート)。
市民農園や体験農園が、都市住民と土をつなぐ場になっています。農業体験への参加が精神的健康にも効果があること(Harada et al., 2021)、参加者の社会的なつながりが増えること(Soga et al., 2017)が研究で示されています。
季節の移り変わりを感じられる緑地空間が、住宅密集地に「やすらぎ」と「潤い」をもたらします。
身近に農地があることで、農業を「知識」ではなく「体験」として理解できます。学校給食での地場産野菜の活用や農場見学は、子どもたちの食育に直結します。
雨水の保水、地下水の涵養、生物多様性の保護、ヒートアイランド現象の緩和——農地は都市の環境インフラとして機能しています。
地震や火災時の延焼防止、避難場所・仮設住宅建設用地としての役割があります。三鷹市や武蔵野市の畑は「災害時協力農地」として指定されております。我々まちなか農家プロジェクトではJA東京むさし三鷹地区青壮年部、やろうよ!こどもぼうさいと共催し、毎年、都市農業×防災PRイベントを実施しています。最近では、2026年3月には三鷹の農家が育てた野菜を使った炊き出し体験イベントが60名満員で開催しました(イベントレポート)。
「都市農地を保全すべき」という市民の意向
出典:農林水産省 都市・農村住民アンケート(回答者1,600名、平成24年度)
東京都の農地は10年間で1,190ha(15.6%)が失われました。特に市街化区域での減少が顕著です。相続のたびに農地が宅地転用されていく流れは、特定生産緑地制度によっても完全には食い止められていません。
農地の減少が続く一方、市民の約8割が都市農地を保全すべきと考えています。
市街化区域内の農地は土地評価額が高く、相続のたびに農地を売却せざるを得ないケースが生じています。三鷹市大沢の果樹農家 島田穂隆さんがインタビューで「相続税の問題に政策的に働きかけないと、都市農業は守れない」と語る通り、農家個人の努力だけでは解決できない構造的な課題です。
都市的地域の農業経営体のうち、農産物販売額1,000万円未満が92.9%を占めます。小さな農地で収益を上げるには、直売・体験農園・多品目栽培などの多角化が不可欠です。
東京都の基幹的農業従事者の平均年齢は65.6歳。後継者がいる経営体の割合は都市的地域で30.5%(全国最高)と希望はあるものの、残り約7割の農家には継承の見通しが立っていません。
三鷹市の販売農家数の推移(2000〜2020年)
出典:三鷹市「三鷹市農業振興計画2027」/農林水産省農業センサス
武蔵野市の農業従事者の年齢構成(令和7年・211名)
出典:武蔵野市「令和7年度版 武蔵野市の農業」

買う:農産物直売所や農家の庭先販売で、生産者を直接支援できます。まちなか農家プロジェクトのオススメ直売所も紹介しておりますので参考にしてください。(オススメ直売所)
また、毎月第4日曜日に三鷹市武蔵野市の農家さんから旬の農作物セットを予約販売しております。三鷹駅か吉祥寺駅(月によって変更)での直接受け取りかご自宅へのデリバリーをおこなっています。(予約方法はこちら)
育てる:市民農園や農業体験農園を利用すれば、自分の手で野菜を育てられます。東京都内に572か所(令和4年)。三鷹市武蔵野市でも週末だけ農業ができるシェア畑で借りることができます。
手伝う:援農ボランティアとして農作業に参加できます。テレワーク普及後、参加者が増えています。延納ボランティアについては東京都援農ボランティア、三鷹市援農ボランティア、武蔵野市援農ボランティアと制度や仕組みがそれぞれ違うので確認後に登録してみてください。
地産地消の食材調達:社員食堂やカフェへの地元農産物導入は、CSR活動と環境貢献を両立できます。まちなか農家プロジェクトでも法人向けに農作物のデリバリーもおこなっております。
農家との協業・商品開発:特徴ある農産物を活かした商品開発、ブランドストーリーの発信など、独自の価値を生み出せます。まちなか農家プロジェクトでは、三鷹市大沢のえびさわ農園さんと共同でhanayakaというエディブルフラワーのサポートをさせていただいています。
後方支援:農業支援団体へ寄付やスポンサードすることで活動をバックアップすることもできます。我々まちなか農家プロジェクトでもスポンサードや寄付を受付しております。詳しくはお問い合せフォームよりご連絡ください。
防災協力農地の整備・活用:三鷹市、武蔵野市の事例のように、農地を防災空間として位置づけ、地域の防災計画に組み込む取り組みが広がっています。
農地保全施策の推進:特定生産緑地への移行促進、都市農地貸借の支援、相続発生時の農地継承支援など、自治体ならではのアプローチが農地を守ります。
都市農業は、単に「都市にある農業」ではありません。新鮮な食料の供給、農業体験・教育の場、防災機能、景観の維持といった多面的な役割を担う、都市にとって必要不可欠な存在です。
2015年の都市農業振興基本法制定により、農地は「宅地化すべきもの」から「あるべきもの」へと方針転換されました。後継者確保率や直接販売率といった指標は、むしろ都市部ほど高いという事実も見えてきています。
それでも農地の減少や相続税問題といった課題は残ります。市民が農産物を買い、企業が農地を活用し、自治体が政策で支える。その「つながり」の中でこそ、都市農業は次世代に受け継がれていきます。
三鷹市・武蔵野市エリアに今も残る畑は、そうした課題に向き合いながら農業を続けてきた農家たちの意志の結晶です。私たちまちなかは、そのリアルな声を伝え続けることで、都市農業を「知る」人から「関わる」人を増やしていきたいと思っています。
そのエリアに住んでいる側からすると、農や畑があるとないとでは違う未来になるはず。
小さい活動、動きかもしれませんが、地元の農家さんがつくったものを買う、買った農作物を家族や友人に伝える。まずは、そこからはじめてみませんか。
三鷹・武蔵野市で農産物を直接買える農家さんの直売所を、まちなか農家でまとめています。ぜひ一度、足を運んでみてください。
→ 三鷹・武蔵野市のオススメの直売所農家一覧を見る