
ブルーベリー、パッションフルーツを生産する吉野果樹園 吉野裕作さん
生まれ年 1986年
出身 神奈川県横浜市
趣味 ゲーム(今風に言うとeスポーツ) カラオケ
特技 学生時代にお箏
好きな食べ物 お蕎麦 最中 コーラ
三鷹市野崎でブルーベリーを中心とした果樹生産及び摘み取り農園を運営されている
吉野果樹園 吉野裕作さん。
就農のきっかけ、果樹生産や摘み取り農園それぞれへのこだわりと想いを伺います。
– 農家を継いだきっかけとその経緯を教えてください
畑違いのサラリーマンから、一大決心で就農へ
吉野 裕作さん(以下、裕作さん) 私は横浜出身の生粋の「ハマっ子」なのですが(笑)、結婚を機に妻の実家の近くにマンションを借りて三鷹で暮らすようになりました。結婚時にはサラリーマンだったのですが、当時から農家は継いでも継がなくても良いと言われていました。
しかし、10年ほど前に父が病気になり入退院を繰り返すようになってしまい、農場をなんとかしたいという思いから、一大決心で農家を継ぐ決意をしました。自分の実家はサラリーマン家庭でしたので、まさに畑違いからのスタートです。昔から思い切りは良いほうなんですよ(笑)

インタビューに答える裕作さん
– 農業はどのようにして学ばれたのですか?
吉野 裕作さん(以下、裕作さん) 農場の手伝いをしながら、東京都の研修施設で学ばせていただいていたのですが、当時研修施設の果樹圃場にブルーベリー圃場がほとんどなかったこと、元々父が東京都の植物研究所の研究員で日本にまだブルーベリー栽培が普及する前からブルーベリーの栽培についても詳しい父のもとで学べる環境にあったこともあり、研修施設は3ヶ月で辞めて、それ以来父のもとで学び独学で取り組んでいます。
– 吉野果樹園では、ブルーベリー栽培は何年前からされていますか?
日本のブルーベリー栽培の「はしり」として、品質第一の栽培を
裕作さん 父が30年ほど前に開園しました。元々うちは祖父の代まで植木農家でした。父も婿入りなのですが、父が東京都の研究所を退職するタイミングでブルーベリー農園をはじめました。当時日本ではブルーベリー栽培があまりされていなかったこともあり、ブルーベリーといえばブルーベリーガムの味が一般的なイメージで、研究員だった父が「ブルーベリーの美味しさを知ってもらわなきゃいかん」ということで始めたそうです。
– 吉野果樹園さんは果樹園としてのブルーベリー栽培のパイオニアなのですね
裕作さん はい、はしりというか、そういうことになりますね。
– ブルーベリー生産で具体的に力を入れている点を教えてください
裕作さん うちのこだわりは、果樹を「地植え」しているところです。近年は大きめのポット(樽)に液体の肥料を入れて育てる養液栽培の農園が増えていますが、うちはなるべく自然に近い形で、樹の持つ力を最大限引き出す手法をとらせてもらっています。ブルーベリーは本来、古い枝を切って更新していけば寿命のない植物なので、根が自由に張れる地植えが一番だと考えています。
剪定をしっかりする分、花と実の量は減ります。また、無農薬なので殺虫はパトロールして手作業ということで手間はかかっていますが、その分品質を向上させたいという思いが一番です。

ブルーベリー圃場でブルーベリーのこだわりをお聞きしました
– 品質のためには手間は惜しまず、ということですね
裕作さん はい。うちは祖父の代まで植木農家だったルーツもあり、自分では「植木仕立て」と呼んでいる独自の手法をとっています。本来は藪のようになるブルーベリーの枝をバッサリと落とし、立派な一本の「木」のように仕立てるんです。花と実の量は減ってしまいますが、残った枝にエネルギーが集中して品質が向上しますし、お客様も奥まで実が摘みやすくなるんですよ。
– 摘み取り農園で心がけていることはありますか?
摘み取り園はお客様とのふれあいの場。新たな加工品への挑戦も
裕作さん 摘み取り農園は第1農園から第4農園まであります。それぞれの農園によって植えている品種が異なりますので、実の熟し方を確認しながら開園場所を、家族で相談して決めています。
摘み取り園の受付やレジ係の従業員さんには長く勤めて下さっている方がいて下さり、みなさんお客様にとても明るく接客してくださいます。自分もサラリーマン時代は営業職だったこともあり、明るく丁寧に楽しく過ごしてもらえるように心がけています。お客様には気持ちよく過ごしていただきたいですので。
– ブルーベリー以外に生産されている果樹はありますか?
裕作さん 8年ほど前からパッションフルーツを作っています。きっかけは三鷹の若手農家たちで八王子の農家さんのところに視察に行った際、当時から八王子で取り組んでいたパッションフルーツを紹介してもらって、やってみようかということで始めました。結構管理に手間がかかるのですが、自分も子供たちも好きだということもあり続けています。現在ブルーベリー農園の一画にパッションフルーツの株を集約させて100株ほど作っています。
– 加工品も手掛けてらっしゃいますよね
裕作さん はい、加工品の制作に関しては私に一任されています。パッションフルーツの加工品として作った「リリコイバター」がおかげさまで好評です。国産のパッションフルーツのイメージが南国ということもあり、ハワイで親しまれている「リリコイバター」を作ってみたいなと思ってことがきっかけです。

人気のリリコイバターと新商品のブルーベリーバター
せっかくだったらブルーベリーの加工品もあったほうが良いよね、ということで、このたび「ブルーベリーバター」という新商品も完成しました。ただのジャムではなく「バター」にするためには乳製品加工の資格を持つ工場を探す必要があり、なかなか見つからず苦労したのですが、「リリコイバター」とのコンビネーションを考えてどうしてもバターにこだわりました。
作った果実全てを加工品にまわせるわけではないので数量限定になりますが、吉野果樹園オンラインショップとあわせて、JA東京むさし管内全ての農畜産物直売所施設でも取り扱いしていただいております。
– 果樹生産品の販売ルートを教えてください
裕作さん ブルーベリーについては摘み取り園が9割、JAや地元の飲食店が1割といったところです。JA東京むさし三鷹地区の直売所で在庫があればお買い求めいただけます。
– 摘み取り園のお客様はどういった方が来園されますか?
世代を超えて愛される農園へ
裕作さん 父がコツコツ農園をやっていた頃からの地元のお客様が今でも多く来園くださっていますが、コロナ禍の頃から近隣の30代、40代の親子さんの来園が増えてきました。摘み取り園はレジャーですし、親子さんの思い出づくりにもなりますので気軽に来園いただけたら嬉しいです。できるだけ幅広い世代の方に来園いただきたく、ここ数年はSNSでブルーベリーの様子を発信していまして、若い方々が少しずつ増えてきました。どの世代の方にも気軽にお越しいただきたいなと思っています。

親しみやすい雰囲気の吉野果樹園第1農園入口の垂れ幕
– 1日のスケジュールを教えてください
裕作さん 7月頃のスケジュールになりますが、6:00管理作業開始、7:30開園準備、8:00開園、12:00閉園、昼休憩、事務作業、15:30管理作業、19:00帰宅、といった感じです。
– 夏は厳しい暑さがありますが、対策はどうされていますか?
裕作さん 真昼の時間の作業はしないこと、摘み取り園の営業についても従業員さん含め無理をせず、気象情報を確認しながらその日の作業を決めています。
– なるほど、大事なことですね。ちなみに冬の時期のスケジュールはいかがですか?
裕作さん 始まりは8:00あたりのスタートと遅めですが、日が暮れるのが早いので16:30くらいまでに毎日の管理作業などを集中して終わらせています。冬は冬で忙しいです。夏と冬がとても忙しい、といった感じですね。
– 農家としての課題を教えていただけますか
裕作さん いろいろあるとは思いますが、①高品質な果実の栽培、②市民の理解、③異常気象対策、だと考えます。
– それぞれの課題についての取り組みを教えてください
裕作さん まず①高品質な果実の栽培については、永遠のテーマです。今年やっていたやり方で来年も高品質になるという保証はありませんので、常に生育の様子とバランスをみながら樹と向き合っていかないといけません。うちは品種も多いので、それぞれの品種で対応が違います。その中で一つ一つ丁寧に品質を維持することを心がけています。栽培情報の勉強と実践、トライアンドエラーですね。
②市民の理解については、吉野果樹園をもっと知ってもらいたい、摘み取り園に来園いただき、ブルーベリーの美味しさ、三鷹に気軽に来園できる摘み取り園があることを知っていただきたいということです。そのためには、地域での様々や役割を担うことで地域貢献も大事ですし、近隣の小学校授業も積極的に受け入れています。
③異常気象対策としては、物理的には暑熱資材の導入などがあります。ブルーベリーは自然のままやっているのですが、パッションフルーツの方には地面の上に敷く防草シートの色を白っぽい色にして少しでも地面の熱の上昇を防いだりしています。あとは特に夏の暑い時の働き方を無理せず調整しています。暑さ以外にはゲリラ豪雨や長雨など、異常な低温と水分量の多さがある時も悩まされますが、根気強くむきあうしかありません。

パッションフルーツを実際にみながら説明
– 日々のたゆまぬ取り組みに、頭が下がります。課題とは反対に、農家としてのやりがいを感じる時がありましたら教えてください
裕作さん やはり、お客様に「美味しい」といって喜んでもらえる時です。うちは摘み取り園がありますので、来園のお客様が喜んでくださっている様子を直接みることが出来るのがとても嬉しいです。手間暇かかりますが、かけた分だけ良いものが出来ますのでとてもやりがいがあります。
– 東京全体の都市農業について、これからこうしたい!こうなればいいな!ということがあれば教えてください
裕作さん まだまだ東京の農業は認知されていないので、レジャーとしての摘み取りを通じて東京農業の認知度向上に貢献したいです。うちの農園をきっかけに近所の畑に気づいてもらう、みたいな感じでも。スタンプラリーみたいに都内の農園巡りができるといいですね。
– 農園巡り、たのしそうですね!暮らす街にある農地に気づくひとが増えるきっかけが大事ですね。これから吉野果樹園へブルーベリーの摘み取りに行く方に、おすすめの品種があれば教えてください
裕作さん うちには80種類以上あるのですが、特におすすめなのは「スター」や「レガシー」、あとは「タイタン」という品種ですね。タイタンはなんと500円玉くらいの巨大な実になるんです!雨で実が割れやすいなど管理は難しいのですが、食べ応えは抜群ですのでぜひ味わっていただきたいです。
– 裕作さん、ありがとうございました!
吉野裕作さんの生産品リスト
<ブルーベリー>品種=約80種、収穫期=6月初旬~8月中旬
※摘み取り園の開園タイミングは時期や天候、また曜日ごとに異なるので吉野果樹園ホームページ(リンクする)をご覧ください
<パッションフルーツ> 収穫期=8月~9月

最後にサービスショット
取材: 宇山淳子 / 苔口 昭一
文 : 宇山淳子
撮影: 苔口 昭一
三鷹・武蔵野市で農業を続ける農家さんは都市農業の担い手です。都市農業についてもっと知りたい方はこちら。
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